優しいイラストが描きたい(小説完成)

優しいイラストで、人を幸せな気分にさせたいな。

優しいイラストで、人に元気を与えたいな。

優しいイラストで、人を幸せにしたいな。

 

 

第1章 やさしいイラスト

 

私は、17歳。

優しいイラストを描きたいと思って、14年。

淡い色合いで、薄い色を使って色鉛筆風のデジタルで絵を描くのが好き。

認められたくて、毎日イラストを描いています。

何より描くのが楽しい!

まだオンラインに載せてないのは、イラストの完成に時間がかかるのと、まだまだもっといいのが描けるって、描き直しするから。

「はる、千春(ちはる)!」

ハッとして前を向くと、目の前に友達の縁(ゆかり)がいた。

「ずっと気が付かないんだもの」

「夢中になっちゃって」

「それだけ集中できるのは、いいことだけどね。ご飯食べてないでしょ。食べに行こう」

「あ、そっか、行く」

スマートウォッチを閉じると、縁と一緒に、食堂に行った。

ざわざわとした食堂で、縁と話していて気付かずに、前の人にぶつかった。

「あ、ごめんなさい」

「大丈夫、こちらこそ、ごめんね」

イケてるというのか、カッコいい男の人だった。

思わず見惚れていると、彼は、颯爽と食堂を出て行った。

「縁、今の人……」

「ん? 花嶋先輩だね。野球部の」

野球部。

野球に対する興味なんてなかったけど、興味出てきた。

「野球ってサイス(インターネット・コミュニケーション・ツール)でやってるっけ?」

「あんた、サイスに詳しくないな。サイスでは、あらゆるスポーツ、ゲーム、映画、ドラマ、漫画、小説、etc(エトセトラ)……、ほとんどの娯楽が見られるよ」

「そうなんだ」

サイスすごいなと思いながら、食堂に並んだ。

和食定食にする。

身体にいい納豆を食べるのが、好きで。

魚も食べるのが好きだ。

特にツナが好き。

お肉も食べるのが好きだ。

野菜も食べるのが好きだ。

豆類も食べるのが好き。

「いただきます」

手を合わせて食べ始める。

お腹が空いているので、よく噛んで食べる。

口に食べ物が入っている間は、無口になる。

きちんと口を閉じて食べる。

鼻呼吸だから、口を閉じていられる。

鼻呼吸は、身体にいいのだ。

「千春は、綺麗(きれい)に食べるよね。魚とか、表のままで食べるし」

「そういう縁も、全部食べてて綺麗に食べてるよ」

食欲たっぷりで、デザートも食べたいな。

チーズケーキにしようかな。

「チーズケーキ買ってくる」

「私が買ってくるよ。私フルーツ買ってくる」

「オリーブオイルをスプーン1杯取るといいよ。消化が早くなるから。いいオリーブオイルは苦味と辛みがあるんだって」

「食堂にオリーブオイル売ってるかな?」

「私持ってるよ」

オリーブオイルは小分けにして持ち歩いている。

「ありがとう」

食事を済ますと、会話タイム。

「こうやって一緒に食事できるっていいね」

そう縁に笑って言うと、縁も笑って言った。

「そうね、私たち幸せだよね」

幸せな時間が、長く続いている。

いつも、幸せだと思う。

幸せがこれからも続くと思う。

家に帰って、イラストを描く。

毎日何時間もイラストを描いていると、描くのが上手くなってきた気がするし、描き上げるのにも早く描けるようになった。

満足する作品が増えてきた。

それをネットにあげて。

評価がいい。

ぽつぽつとイラストを買ってくれる人が増えた。

だんだん、お金が貯まってきた。

少しは人を喜ばす優しいイラストを描くことができるようになってきたかな?

 

 

第2章 花嶋先輩

 

学校で、花島先輩に会うけれど、野球を見ているだけで、声をかけたいけど……。

そんな学校の帰り道で、花嶋先輩に会った。

偶然会えたのは嬉しい。

思わず勇気が出て、花嶋先輩に声をかけられた。

「花嶋先輩」

呼びかけたはいいけれど、次何を喋ろう。

「君は?」

「あ、えっと、幹里(みきさと)千春です」

「ああ、食堂でぶつかった子だね」

覚えててくれた。

「前は見て歩こうね」

言われてしまった。

「それで何?」

「あの、アドレスを交換しませんか?」

「アドレス? いいよ」

花嶋先輩はもうすぐ卒業する。

会えなくなる前に、話ができて、アドレスを交換できて良かった。

サイスのアドレスを交換すると、花嶋先輩と別れた。

もっと一緒にいたかった。

けれど、今日の収穫はあるものね。

家に帰ってもイラストを描く。

少しでも上手くなれば、イラストで食べていけるかもしれない。

流行は追わず、自分の描きたいものを描いていく。

そのうち、思い通りのイラストが描けるようになってきた。

メッセージを花嶋先輩に送る時、このイラストも添えて送ってみよう。

花嶋先輩からの返事を待つ間もイラストを描く。

もっともっと上手くなりたい。

花嶋先輩から返信が来た。

−−綺麗だね、優しくて心が癒される−−

良かった、気に入ってもらえた。

お礼の返信を送ると、「他にも見せて欲しい」と返信が来た。

他にも数点送ると、喜んでもらえた。

好きな人に自分の描いたイラストを認めてもらうのってすごい。

やる気がみなぎってきた。

花嶋先輩とチャットをすることになって、嬉しい。

花嶋先輩が、私のイラストは、見てもらえれば、いいって伝わって稼げるはずだと、いいところを教えてもらった。

そこはサイスの中で優良な作品ばかりが載るところで、ランキングがつけられている。

審査を通らないと載せることもできないけれど、審査に通った。

ランキングはまだ下の方だったけれど、作品を描くたびに上がってきて。

私のイラストがランキング1位を取るようになり、お金もかなり稼げるようになった。

「花嶋先輩にお礼を言わないと、そして、告白しよう」

その頃花嶋先輩は卒業して会社に入っていた。

日曜に、お茶に誘った。

心臓がバクバクする。

もし受け入れてもらえなかったら?

もう花嶋先輩しか考えられない。

日曜になるまで、夢の中で花嶋先輩を見ていた。

日曜になり、いつもより可愛い服を着て、いい香りを身につけて、化粧をして、素敵な鞄を持って、綺麗な靴を履いて。

1番魅力的な私になるの。

途中の道で、美しい花を見て。

なんだか、夢が叶いそう。

「待った?」

「今来たところです。カフェ、こっちです」

道を右に向かって歩く。

心臓が速くなりすぎて、聞かれてしまいそう。

期待なんてしてなかった。

ただ、伝えたかった。

ただの憧れではないから。

喫茶店の中は優しい音楽が流れていた。

気持ちが落ち着く。

紅茶が運ばれてきたので、告白する。

「花嶋先輩、好きです」

「え?」

「ダメなのはわかってます。ただ、言いたくて。迷惑かもしれませんが」

「待って待って、早とちりしないで。僕も君を好きだよ」

「え?」

花嶋先輩が柔らかく笑った。

大好きな花嶋先輩が。

「友達って意味じゃないですよ。恋愛って意味で」

「僕も、そうだよ」

それからは、どうやって家に帰ったかわからないくらい、ふわふわした状態で、花嶋先輩が家まで送ってくれたのだ。

もう胸が喜びで溢れる。

そうして描いたイラストはとても素敵なものになった。

ダウンロードしてくれる人が増えて、お金は一生困らない程度には稼げるようになった。

これからも幸せな優しいイラストを描いていこう。

花嶋先輩とはどんどん会う回数が増えて、気がつくと毎日会っていた。

「幹里千春さん。あなたはこの男性に忠誠を誓いますか」

讃美歌の聴こえる中、結婚式が粛々と行われる。

ブーケを投げて、次の人にも幸福を。

花嶋先輩の下の名前は、信矢(しんや)。

信矢と一緒にこれからを生きていく。

それから子供もできて、子供もいい子に育って。

夫婦仲円満で。

私のイラストを見て幸せな気分になれたと、たくさんのありがとうをもらった。

人生、やったね♪

 

Fin

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