異世界に来ちゃったよ(小説)(2017/3/27作成作品、期間限定投稿)(by.来樹杏果)

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 オレ、初めて恋をした!
 イヤ、正確に言うと、初めて本気で恋をしたんだ。
 アイツはめっちゃ可愛くて、オレはアイツの顔を見るだけでとろとろで。
 そんなアイツから、今日! 今日だぜ。告白されたんだ。で、とーぜんOKしたんだが、アイツ、なぜか切なそうな顔、したんだ――。

 

 第一章

「茅野君、帰り一緒でもいい?」
「お? おお」
 成村茜はほんの少し頬を赤らめて、オレを誘った。
 きゃわいい~。
 オレ、でろでろ。
 オレより少し小さい背に、華奢な体に、肩より少し長い髪の毛。藍のブレザーにチェックのスカート。もちろんスカートの下にジャージなんて履いてない。濃紺のハイソックス。足首が細い。
 きしし。
 オレたちの通う、宇都宮大南高等学校の近くには神社がある。小さな神社だけど、初詣に来たら混んでいた。
 階段を上ると、森の中にあるかのような、厳かな雰囲気のある神社。
 オレが願ったのは当然、成村への恋の成就。かなった訳だから、いつかお礼参りに来ようと思っていたら、彼女の方から「神社、寄ろ?」って、誘ってきた。
 神社の清々しい空気は、好きだ。
 美術部の部活のない日、オレはよく帰り道に寄り道をした。
 神様って、いるのかなんて、正直分からない。ただ、何かにすがりたくなる時は誰にでもあるんじゃないかな? それが恋人だったり先生だったり友達だったり、人によって違うと思うけど。
 オレは何にすがればいいか分かんなくて、ただ気ままに入ったこの神社にすがった。それだけだ。
 こんな気ままなオレの願いを叶えてくれたんだ。神様いるかもな。
 成村がオレの横を歩いているってだけで、奇跡のようだ。
 彼女の横顔を覗き見る。
 やっぱ、可愛わわ。
 彼女が、オレを好き?
 考えるだけで、思考が飛びそ。
 手繋いじゃったりしてもいいんでしょうか?
 冬なのに手ばっか汗、かいてやがる。
 こんな手で触ったら嫌われないかな?
 柔らかそうだな。
 どっかにジッパーあって綿とか入ってないかな?
「お祈りしよ」
 彼女の言葉にいつの間にか賽銭箱の前まで来ていたことに気づいた。
 恐るべし、妄想。
 ま、とりあえずお礼、と。
 神社の神様、ありがとうございました。
 オレが目を開けると、彼女はまだ真剣そうな顔で祈っていた。
 オレもまだ祈っている振りをして、横目でちらちらと彼女の顔を見ていた。
 何をそんなに祈っているんだろう。
 大学受験には早すぎるよな? オレたちまだ一年だし。
 彼女が目を開けて前を見た。その目はまっすぐで、いつもの明るい彼女の目とは違った。
 いや、オレが本当の彼女を知らなかっただけかもしれない。
 そう、オレは知らなかったのだ――。

 

 その日から、一週間オレたちは毎日一緒に帰った。毎日神社に寄った。
 なのに、会話ほとんどなし。
 つかオレ、手まだ繋げてないし。
 何の進展もなし。
 一週間だぜ? 一週間何もできなかった。
 これって、オレ男って言えるのか?
 一人落ち込みながら祈る彼女を見ていた。
 その時、地震が起きた。
「来た」
 冷静に成村は言った。
「な、成村?」
 彼女が手を掲げた。その手の中に白く光る物が現れた。
 大きな宝珠?
 まるでゲームの世界に入り込んだみたいだ。
 地震はまだ続いている。
 でもなんだ?
 周りの風景が、揺れているだけじゃなく回っている?
「成村っ、なんだよ……これ!」
「茅野君、ごめんね。巻き込んで」
 彼女のその言葉を聞いたのを境に、オレたちは飛んだ!
 目まぐるしく風景が変わる。
 どこに向かっているか分からないが、ここは多分日本じゃない。砂漠みたいな風景や熱帯雨林みたいな風景が見える。
 っていうか言っているその間に周りは夜空になっているし、て、オレたち浮いている!?
 これって――宇宙?
 再び風景が地上になった。
 でもこれって地球上じゃないよな。
 空に浮かんだまるでゲームの中によくある天上の島がいっぱい。
 はは。
 驚き過ぎて、オレ笑うしかねーじゃん。
 体がふわりと、地面に降りた。
「これ夢だよな」
 オレは自分の頬をつねってみた。
「いてえ」
 嘘だろ。嘘だろ。
「ま、待てよ。どうなってんだ? これが夢じゃないってことは、ここ、どこ!?」
 成村は肩で息をしている。オレの言葉にちょっと待ってとジェスチャーした。
 光る宝珠はさっきまで人の頭くらいの大きさだったが、いつの間にか成村の小指の大きさ位まで小さくなっていた。彼女はそれを指輪に変えたらしい。人差し指に宝珠を着けると、宝珠は淡い七色の光を放った。
「ほぼ成功、かな。一週間も祈ったもんね」
 そう呟くとオレを見て、もう一度謝った。
「ごめんね、茅野君」
「その言葉はさっき聞いたから、いい。教えて? オレでも分かるように」
 オレがバカなことは、同じクラスにいたから知っているだろう。
 オレは地面に座り込んだ。土の感触はしない。茶色いが、雲の上にいるみたいな感じ。
「えと、ここは地球と違った世界でセプトって世界で……」
 成村の説明を聞いて、オレは頭を抱えた。
 今では彼女も座り込み所在なさげに指を自分の指でいじくっている。
「つまり要約すると、セプトって世界で起きた反乱を鎮めるには、地球で生まれたオレの血が混じった宝珠が必要で、その宝珠を作るため、オレをセプトって世界に連れてきた、と」
 つまり、つまりだ!
「成村はオレを利用するため近づいたんだ」
 言ったオレの言葉は冷えていた。
 こんなに冷たく言うつもりはなかった。
 でも氷みたいに冷えていたと思う。
「ごめんなさい」
 しょげた顔の彼女の顔を見るとオレもしょげてくる。
「ゲームだったら、『あなたの力を貸して頂きたい』だよな? なのにオレは『血』? 英雄でもなんでもないじゃん」
「で、でも茅野君の血は、星と星との傾きがいい時に生まれた、世界でも有数の」
「有数の、だろ? 唯一でもねーし」
「聖なる場所だったあの神社の近くで生まれた」
「場所なんてただの偶然じゃん」
「赤ん坊でも老人でもなくって……ダメ?」
「年だって偶然じゃんか! 偶然の重なりがあっただけで英雄面しろと? それに――」
 オレは思わず、恨みのこもった声を出していた。
 好きな女の子を、どうしてオレは、困らせてばかりなんだ!
 ダメだな、オレは。
「騙して連れてくるなんて、あんまりだ」
 さっき、彼女は謝っただろ?
 どうして許してやらないんだ。
「謝って……るの、に」
 ほら、成村が困って。涙を流した。
「な、成村悪い」
「やー、茅野君なんて、知ら、な……い」
 オレ、女の子を、それも、好きな女の子――を泣かせるなんて、なんて男だよ。
 成村はぐずぐずと目と鼻をこすっている。
 オレはただ、そこに力なく座っているしかできなかったんだ――。

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